アクロマート望遠鏡の青ハロ対策

SC48をつかった絞りでミニボーグ50の青ハロ対策は、とりあえず効果があることが わかりました。 ただ対象がミニボーグ50という小口径望遠鏡だったので、 青ハロも比較的対処しやすい部類だったからかもしれません。 実際のところミニボーグにとってL41フィルタはともかく、 SC48絞りまで必要は無いでしょう。

今回から条件の悪い対象で青ハロ除去をしてみたいと思います。 あらたな望遠鏡ということで、対策も最初から考えます。

1 ネタ望遠鏡 シュワルツ150S

ミニボーグに続く青ハロ対策を試す望遠鏡は「シュワルツ150S」です。 今回からこのシュワルツ150Sも青ハロ対策遊びのネタとすることにしました。 真っ当な製品 *1 のなかでは、最も酷い青ハロを出してくれる品、究極の青ハロ望遠鏡といえるでしょう。

2群2枚アクロマート D=150mm f=750mm F=5.0という極端な仕様です。 おそらく低倍率眼視専用として企画されたものと思われます。 これを2本使った双眼鏡などもあり、そこそこ本数は出ていたようですが、 写真を撮ったという例は多くはないようです。

普通、この口径でこのF値だと「アストロカメラ」なんて別名がついて、 2群2枚の安価なアクロマートではなく蛍石やEDレンズを含む4枚のレンズを入念に 設計しより大きなな撮像素子を前提にした広い範囲で良像の得られる高級高価な製品と なっているはずです。 アクロマートだと色収差だけでなく、球面収差など 他の収差が大きく一般には「使えない」望遠鏡になってしまうからです。

2 試写の映像

実際になんの対策も無しに写真を撮ると写真1 *2 の通りになってしまいます。 この絵をみると、使えない評価になるのも頷けます。

Schwarz 150S 青ハロ無対策でのM42
写真1: 青ハロ無対策 M42の写真
Schwarz150S Nikkon D40 標準JPG ISO1600 ビクセンセンサー赤道儀ノータッチガイド 30sec

星雲より派手な青ハロ、紫ハロが発生して綺麗を通り越して恐い感じです。この結果 を見ちゃうとこの望遠鏡で写真を撮ろうとは思わないでしょうね普通は。

常套手段のL41フィルターを使って、もう少し青ハロが出にくい対象を撮ると少しは天体写真っぽくなってきます。

Schwarz 150S L41でのM81
写真2: L41青ハロ対策 M81 M82 の写真
Schwarz150S Nikkon D40 標準JPG ISO1600 ビクセンセンサー赤道儀ノータッチガイド 180sec

L41をつかってようやく小口径アクロマートの無対策映像っぽい *3 写真になりました。

3 数値的に頑張ってみる

L41で対策した結果をみると、現像処理のほうで頑張ればなんとか見られる 映像が得られるかも知れません。今回はこのL41フィルタの写真をいじってみることに します。

で、いろいろ試して現時点で得られた映像は写真3の通りです。

Schwarz 150S L41でのM81 数値的に青ハロ除去
写真3: L41青ハロ対策 M81 M82 の写真
Schwarz150S Nikkon D40 標準JPG ISO1600 ビクセンセンサー赤道儀ノータッチガイド 180sec×3枚から作成。

ちょっと頑張りすぎて色見抜けちゃってますが、いちおうカラーです。 原版の33%縮小写真は下のリンク先にあります。

いまだに試行錯誤の段階ですが、上の絵は、

  1. なにもいじっていない原版3枚の加算合成画
  2. 原版の青を落とした映像を白黒化して3枚分合成した画
  3. 1の映像に2の映像の乗算合成

実際はもう少しコントラスト調整など微調整は行ってますが、作業の肝は上の通りです。 合成などはgimpを使用しました。

アクロマートの特性上、短波長側で色収差は如何ともしがたいのですが、 緑〜赤の領域はその短波長側画像と比較して収差は小さいものです。 したがって、RGBのうちBの情報を落としてやると、 その収差が小さい画像を得ることが出来るはずです。 *4

ただ、これには条件 *5 があり、短波長側がある程度カットされていることが必要です。 なぜなら、この領域は紫領域のため、CCDのR素子もこの極短波長側の 光に反応し収差の大きい星像がR画面にも乗ってしまうからです。 L41を使わなかった場合はおそらくR画面の星像も大きく使いものにならないでしょう。

白黒CCDによるRGBLによる疑似カラー画像に似た *6 考え方ですが、普通のデジカメなので普通に撮影し、 使えるGB画像はそのまま使いL画像とし、 ピンぼけの青画像はGBから得た白黒画像でむりやりピンぼけを抑え込むという方法です。 疑似カラー法ならばピントずれのB画像のピントを合わせ直した画を使うのでしょうが、 ここまで極端な大口径短焦点アクロマートだと、 おなじ青といっても480〜410までの光に限ってみても収差は大きめですし、倍率の色収差 の問題や、なにより現地での撮影が面倒臭いので普通に撮影して 後から処理する方法を想定してます。

かなり乱暴な方法ですが、とりあえず、青ハロはほとんど気にならない程度まで低減させることは できていると思います。ちょっと堅めの映像で昔の白黒写真で 撮った写真っぽくなってしまいましたが、なんとか見られる映像に なったかなぁというところです。ただ、球面収差に由来する 全体的にボテッとした星像はしかたないところですねぇ。

原版の映像がもうちょっと青ハロが少なければさらに見た目が良くなるかもしれませんね。 というわけで、次回に続きます。


*1所謂おもちゃではなく、設計にちゃんとした意図があり、おさえるべき点はおさえているという意味です。
*2miniEQの件もあり、最近シュワルツ150Sで写真を撮ってません。去年の12月の写真を再度掲載します。今回は新たに撮った写真ではなくこの去年の写真データで遊んでみるネタです。
*3球面収差はやっぱり大きく、ボッテリした星像ですが、焦点距離の長さでカバーした感じですね。対象に対する星の大きさが、少し小さいクラスのアクロマート望遠鏡っぽいところがあります。
*4厳密に言うと、現像エンジンの色変換の影響で、RG画像にも青の色収差の影響がのっています。現像モードを「鮮やか」にした影響と思われますが、RG画像の星の像周りは青ハロ部分がやや黒く抜けており、この部分の赤緑をおさえることにより青を強調し「鮮やか」を演出しているようです。今回に限ると逆にこれはプラスになります。乗算マスクとして使用すると青ハロをおさえてくれます。
*5前提として原色系フィルタを使った撮像素子であるとしています。捕色系では状況が違う可能性があります。
*6通常LのLRGCとL画像の目的が違うのでLRGCではなく、あえて言えばMRGBですかね。このあたりは次回以降のネタ予定ですが。